今日は花入れに関するノートです。
茶席に飾る茶花を入れる器をお茶の世界では「花入(はないれ)」と呼びます。
お客は茶席に入ると、床の間の掛け軸と茶花を拝見するのですが、花入れは床の間に置かれていることもあれば、
近くの柱に設置されていることもあります。
いずれにせよ、掛け軸の拝見後にそれらを見て、季節の訪れや亭主のおもてなしの心を感じるのです。
様々な種類の花入
花入れは、床柱に掛ける「掛花入」、床の天井から吊るす「釣花入」、床に置く「置花入」の大きく3種類があります。
この置き場所や材質によっては、花入の下に薄板を敷くこともあります。
素材は竹、金属、陶磁器のもの、そして籠のものなどがあります。
籠は5月〜10月の「風炉(ふろ)」の季節に使われます。
茶花に合わせることはもちろんですが、その時の茶席の格、コンセプト、季節を考慮して使うものを決めます。
何を使うにしても、「茶は野にあるように」という千利休の言葉を大切にし、華美になりすぎないよう心がけます。
花を見上げるという行為
筆者が茶花の拝見を初めてした時、花入には椿が入れられていました。
掛花入だったため、座った位置からちょうど茶花を見上げる格好になりました。
椿のような低木の花を“見上げる”行為に、新鮮さと驚きを感じました。
お茶を習っていなければ、椿のぷっくりとした膨らみを
下から見上げて観察することもなかったのかな・・・と
不思議な気持ちでいっぱいになります。
竹根花入の美しさ
前述の通り、花入の素材も様々とお伝えしてきましたが、筆者は特に竹製のものに魅力を感じます。
材質上、茶花と一体化しているように感じやすいですし、形状や節が一つ一つ異なる点が面白いなと思います。
「竹根花入」は文字通り、竹の根っこを加工して作られた花入。
通常、竹の花入れは土から出ている節の部分を加工して作られます。
その際に切り出した竹の根っこ部分も、しっかり再利用しようということで生まれたのがこの「竹根花入」なのです。
洗練されすぎていない、自然感そのままの出立に引き込まれ、この花入独特の美しさを感じるようになります。
自然の形に人間が寄り添う
この非常にサスティナブルな竹根花入。
職人さんたちの制作工程を何となくイメージすると、さらに魅力を感じるようになります。
通常こういった道具は、人間の使い勝手に合わせ、加工されることが殆どかと思います。
ただ、こちらの花入に関しては、土から出てきたそれぞれの根が持つ固有のフォルムや雰囲気を一旦受け入れ、
そこから、よりよい形になるよう手を加えていきます。
作り手である人間に、自然からちょっとしたミッションが課せられた状態です。
自然と人間の無言のやりとりの上で、一つの花入ができると思うと、また少し道具のことが愛おしく感じられます。